土井の浦教会 

南松浦郡新上五島町若松郷
1915年設立。木造、鉄筋コンクリート造
  写真撮影・筆者

「祈りの空間を後世に」

 小さな集落のある入江を見下ろす小高い山の中腹に、教会は建っていた。
 真っ白な新建材の壁にアルミサッシ。「建替えられたのか」と思いながら、それでも拝観させていただこうと扉を開けた。
 そこに現れたのは、三廊式、4分割リブ・ヴォールト天井の紛れもなく写真で見た土井の浦教会。こぢんまりとした御堂は造形も素晴らしく、手入れも行き届いたとても気持ちのいい空間。なるほど、建替えではなく外部だけが改修されていたのだった。アルミサッシの窓も、以前から使われていたであろうステンドグラスを内部に取り付けてあり、祭壇の方を見る限り、近代化された外観を感じさせるものは見当たらない。先祖代々、祈りを捧げられた空間は、信者さん達によって大切に残され引き継がれていた。
  近畿大学の川上秀人教授の解説によると、大正7年3月9日献堂式 、設計者、施工者ともに不詳。明治末期頃の建築と推定される旧大會教会堂を移築したものだという。
  教会の資料室にあった改修前の写真と見比べると、外観は教会堂全体に手が加えられ、かなり簡素化されている。内装にも多少の手が加えられているようだが、これらの改修は、信者さん達が維持管理しながら祈りの空間を後世に残していくための最善の方法だったのだろう。今後、過疎化が進むと維持は少しずつ難しくなると思われる。可能なら、一宗教の建築ということを越えて地域の一つの文化として、行政等が協力してよりよい形で後世に残していってほしいものである。

(三浦豪介 建築設計事務所主宰)
2004年2月7日長崎新聞掲載