清心修道院教会(Chapel of Seishin Convent Nagasaki)

清心修道院教会(マリア園) 

長崎市南山手町
1898年竣工(しゅんこう)。れんが造
  三沢博昭写真集「大いなる遺産 長崎の教会」より

長崎港を一望、端正な造り

 五月のある日曜日の朝、長崎市南山手にあるマリア園を訪れた。れんが造りの建物は、昔の外国人居留地に明治32(1899)年に完成したという。三階の屋根裏部屋に出窓が見え、パリの古いアパートの景観を思わせる。ミカエル像の下の玄関をくぐって中に入ると、右手に小ぢんまりとした教会がある。蝙蝠(こうもり)天井が美しい。
  港を一望する高台に立つこの洋館は、フランス人のセネンツが設計したものである。もう百年もたった建物とは思えない端正な造りで、保存状態は申し分ない。
  いま、この中に親から離れた七十五人の子供たちが、二十五人のシスターたちと暮らしている。養護施設と修道院だが、その歴史はあの「信徒発見」を果たしたプチジャン神父にさかのぼる。
   開国した日本でフランスから来た神父が心を痛めたのは、親のいない子供たちのことだった。明治十年、プチジャン神父はパリミッション会にシスターの派遣を要請する。その四年後、四人のシスターをパリの「幼きイエズス修道会」から 迎え、三十人の孤児を抱え、使徒事業を始めたのである。
 日曜日で子供たちは出掛けているというので、部屋を見せてもらう。内側から見ると出窓は、漆喰(しっくい)の壁で窓枠が塗り込められている。室内はきれいに整頓され、清潔感が漂う。この部屋で子供たちは高校まで暮らし、巣立っていく。
  シスターの話を聞いていると、お昼の鐘が鳴った。静かな園内にやさしい音色がしみ込んでいく。

(堀 憲昭 長崎文献社取締役)
2003年6月7日長崎新聞掲載