長崎の教会群の世界遺産としての価値
歴史的な価値

 長崎の教会は、表1にあげた約450年におよぶ世界史的にも稀なキリスト教の伝来・弾圧・復活の歴史を背景に生まれたものです。全国に残る戦前までに建設された教会の約半分が長崎に集中していることは、この重厚な歴史の存在と切り離せません。

 その多くは近代に入ってから明治・大正・昭和初期にかけて、特に初期にはパリ外国宣教会の外国人宣教師の指導のもと、地域住民の力を結集して信仰の復活の象徴として建設された貴重な教会がそのままの形で残されたものです。

 また、長崎県においては、キリスト教が日本古来の民俗信仰と融合したカクレキリシタン文化が消滅の危機にあります。現在のカトリックとは一線を画しており、有形の教会とは直接の関係はないですが、無形の文化財として貴重な価値を有しています。



建造物としての価値

 長崎の教会は、その外観の特徴から「エキゾティック」とか「ロマンティック」と表現されることが多いのですが、実は、使用されている材料・工法の多くは、日本在来のものを活用しており、きわめて日本的な性格も帯びています。

 つまり、外国人宣教師が持ち込んだ西洋の建築手法と日本人大工の受け継いだ在来技術が結びついたものであり、東西の文化が融合した結果が、特色ある教会建築に結実したといえます。

 幕末から昭和戦前期にかけての各時代ごとの教会が揃っており、また構造的には木造、レンガ造、石造、鉄筋コンクリート造と多様で、規模も大小さまざまですし、造形的にも実に多くの変化に富んでいます。


文化的景観としての価値

 それぞれの教会が生活の中に息づきつつ、自然にとけ込み見事な景観を創り出しています。「文化的景観」とは、世界遺産の登録上、近年重視されている考え方であり、いわば人間と自然が共同して守り育ててきた景観のことを言いますが、教会を取り巻く環境を文化的景観とみても、貴重な価値を有しています。

 しかし、離島・半島部の近年における農業の衰退や人口減少が、こうした文化的景観の維持を次第に困難にしているのも事実です。


長崎の教会の世界遺産としての価値のまとめ

 前述のように長崎の教会群は、西洋と東洋の文化の出会いの結果生まれた自然景観とも調和した美しい独特の建築様式を持っており、これは、世界遺産の登録基準の(ii)又は(iv)に合致していると考えられます。

 また、教会群は、近代におけるキリスト教の信仰の復活という世界史的な歴史と直接結びついたものであり「真正性」を有しており、登録基準の(vi)を満たしています。このほか、登録基準(i) (v)への適合性についても検討の余地があります。